World of Pigs 1.0

World of Tanksというオンラインゲームで豚が戦車に乗っています。せまいです

しょうがないにゃあの人は最高のカスタマーエクスペリエンスを顧客に提供している

 まあ何が言いたいのかというとタイトルの通りなんだけども、ある日の夕方に顧客対応していてふと気付いたのである。しょうがないにゃあの人は最高のカスタマーエクスペリエンスを顧客に提供している、という事実に。

 

 そもそも「しょうがないにゃあの人」とはだれを指すのか、という点については、こんな場末にたどり着くような方であればすでにインターネット義務教育を済ませておりご存じと思われるため詳説は省くが、今から十数年前に某オンラインゲーム内で行われた以下のやり取りにおける女性側の方である。今回はこの一連の対応がいかに最高だったのかについて一つ一つ紐解いていきたい。

 

 まずは最初の声掛け事案を済ませてからの見抜き希望への反応である。

 これはもともと「見抜き」という言葉を知っていたかどうかで評価すべきポイントが変わるが、いずれにしても素晴らしい対応と言える。

 仮に知っていた場合、すべてを理解しているにも拘らず、敢えてよく知らないように振舞ったうえで、さらに言葉の意味を察したフリまでしたことになる。私の知る限り、即座にこの判断が取れる人物は、日本史上で見てもうつけを装い敵を欺きながら牙を研ぎ、機を得ては版図を広げ天下布武を唱えた織田信長くらいしか見当たらない。

 逆に知らなかったとすると、相手の態度から一瞬でその意味するところを察したことになる。この洞察力・対応力は信長の一挙手一投足を見逃さず臨機応変に立ち回り、ついには天下人まで上り詰めた豊臣秀吉を彷彿とさせる。どちらにせよ戦国の世を駆け抜けた英雄たちに匹敵する能力の持ち主であることに疑いの余地はないだろう。

 

 続いては、この返し方である。 

 疑問形で自信なさげに聞き返すことによる、「ちょっと耳年増なところがあり、知識として知ってはいるけど実際のことについてはよく分かってはいない」というイメージの演出がまた素晴らしい。これが仮に「お兄さん溜まってるんですか?」だったとしたらこのシズル感は出ないであろう。まあ実際書いてみたらこれはこれで良いのではないか?という気がしてきたのだが、それでもやはり一般的には手練手管というかゲームの外では遊んでますみたいな想像をさせるべきではないだろう。

 また、逆に「なんでですか?」と完全に無知を装った回答をした場合、男性サイドとしては「いや、実は男性の精巣には精子を溜める機能があってですね……」と一から説明せねばならず、それは流石に面倒だと思える。何しろ、あまり直接的な表現は避けたいところだが、男性のちんちんは既に硝酸アンモニウムを貯め込んだベイルート港のように一触即発の状態になっているはずなのだ。この相手の望むことを理解して対応しつつ自らのコントロール下に置く手腕は、天下への野望を胸に秘めつつ味方を作り、最終的には幕府を興して日ノ本に太平の世を築いた徳川家康もかくやといったところである。正直言ってもう俺も見抜きさせてほしい。い、家康様……ッ(錯乱)

 

 (20秒後)ふう、さて、ついに戦国三英傑が揃い踏みしたわけではあるが話はまだ終わらない。残るはいよいよインターネット史に残るこの名言である。

 少し想像してみてほしいが、もし自分が街中で突然横から「見抜きさせてください」と声をかけられたとして、この返しができるだろうか。豚であれば「しょうがないぶぅ」どころか逃げ出すか警察を呼ぶのが関の山であろう。そこを「しょうがない」と、これまた「男の子ってのはそういうものなんだよね。私知ってるんだから!」という、机上のみで学んだかのような知識を持ったうえで包容力に満ちた発言で返す姿勢には感動すら覚える。これはもはや見抜きを司る女神の所業と言わざるを得ない。

 そしてそこから間を置かずの「いいよ」である。恐らくこの段階で男性プレイヤーのベイルート港は倉庫が燃え始めてまさに爆発寸前だったと思われるため、ここで長々と話したり結論を焦らしたりしなかった即応力も簡潔ながら素晴らしい。この対応はレバノン政府あたりも見習うべきところが大きいのではないだろうか。

 

 実のところ、この一連のやり取りは、単純に言ってしまえば「見抜きさせてください」「いいよ」の一言ずつで済んでしまうのだ。もしそうだったらインターネットを介して日本のどこかで数億の精子が死滅しただけで終わっていただろうが、しょうがないにゃあの人による非の打ち所のない対応により、後々まで語り継がれるナラティブ、いやミソロジーへと昇華していったのである。きっと精子も成仏しているに違いない。

 さて、これで皆さんにも本記事のタイトルに共感いただけたのではないあろうか。しょうがないにゃあの人が顧客に対して単にサービスを提供するのではなく、適切なコミュニケーションにより最高の体験を提供していたという厳然たる事実には、もう疑問を挟む余地もないだろう。なので、今後、サービス業への就職や転職を目指す方は、面接の機会があればぜひ胸を張って言ってほしいと思う。

 

「私が尊敬する人物は、しょうがないにゃあの人です」と。